Urban Hymn

Urban Hymn

Christian Vuust

アーバン ヒム

クリスチャン ヴースト

発売日
2014.10.22
レーベル
Cloud
規格
DIGITAL/CD

注目すべきは共演者だ。ピアノのアーロン・パークス(1983~)は18歳でテレンス・ブランチャード・グループに参加し、頭角を現した。クリスチャン・スコット、ケンドリック・スコット、カート・ローゼンウィンケルらNY新世代との交流で存在価値を高め、Blue Noteからのリーダー作『インヴィジブル・シネマ』(2008年)で飛躍。昨年ECMデビュー作をリリースして、新たなステージに進んだ。今年3月にはデンマークでのリリース・ツアーに参加している。ベースのベン・ストリートは90年代半ばにレコーディング・キャリアをスタートさせ、ヴーストとの共演歴があるヤコブ・ブロの他、ローゼンウィンケル、ポール・モチアン、マーク・ターナーと録音。フリー系人脈を含めて、NYシーンの重要な一角に位置する。ドラムスのジェフ・バラード(1963~)は2000年前後にチック・コリアのオリジンとニュー・トリオに抜擢されて、世界的な知名度を獲得。近年はブラッド・メルドー・トリオ、マーク・ターナーとのフライ・トリオ、ジョシュア・レッドマンらのアルバム参加やエンリコ・ピエラヌンツィとの共演、リオーネル・ルエケ+ミゲール・ゼノンとのリーダー作『Time’s Tale』で当代トップ・ドラマーの評価を確立している。
本作のネーミングに関して、ヴーストはNYとデンマークの土地柄を象徴する二つの言葉を組み合わせて、両者のイメージを融合させたアルバム・コンセプトに由来すると言う。選曲はすべてヴーストのオリジナルで、ニューヨーカーとの現地著名エンジニアが参画した録音であることを踏まえれば、ヴーストに期するものがあったことは想像に難くない。グリーンランドの伝統音楽に依拠した「サマー・バイゴーン」は穏やかな曲調で、パークスとの信頼関係がうかがえるデュオ。テナーとピアノの動きにキース・ジャレット・ヨーロピアン・クァルテットのエコーが感じられる「ヘリエネス」、テナーとそれに呼応したピアノがメランコリックに融合する「アーバン・ヒム」、メロディアスなピアノ・トリオのパートと、それに刺激されたテナー・ソロが収穫の「フィアー(フェザー)」、チャールス・ロイド的な意外性が浮き彫りになる「トンプキンズ・スクエア・パーク」、デクスター・ゴードンを想起させる大らかなテナー吹奏が曲名に合致する「バイキング・ザ・ビッグ・アップル」、前曲からの流れでアフタ-・アワーズ風の雰囲気を醸し出す「ルバート・NYC」、テナーが設定したムードをトリオが発展させる「レアケ(スカイラーク)」、葬送曲のような趣があるバラード「プロセッション」、家族を大切にするヴーストが妻をイメージしたと想像できる「ウェディング・ソング」。最後まで聴き進めれば、欧米のブレンド効果を企図したアルバム・コンセプトが、実際は米国トリオを自身の土俵へと招いた仕上がりになっており、このヴーストの個性がワールドワイドにアピールする日も、すぐ間近にあると確信する。
杉田宏樹 (ライナーノーツより)

TRACK LIST

DISC1

01
Summer Bygone
02
Helgenes
03
Urban Hymn
04
Fjer (Feather)
05
Tompkins Square Park
06
Biking The Big Apple
07
Rubato NYC
08
Larke (Lark)
09
Procession
10
Wedding Song