“宇宙人 (Cosmos People)” Cosmic Lounge vol.03 2019.03.08(fri) モーション・ブルー・ヨコハマ
横浜での平日午後5時45分開演にも関わらず、ほぼ満席のモーション・ブルー・ヨコハマ。圧倒的に女性が多い。中国語も少し聞こえてくるが、ほとんどは日本のファンだ。宇宙人が日本でこつこつと実績を積み上げてきた結果。そして、なんとなく和やかな雰囲気がしている。
会場が暗転になり、メンバーが客席後方から登場した。歓声。ステージに上がりスタンバイができたところで照明がつき、ライヴが幕をあけた。最初の曲は、最新アルバム「RIGHT NOW」から「不用大腦(Brainstoning)」。
前回昨年9月9日の渋谷WWWのオール・スタンディングのライヴとは違い、モーション・ブルーは着席だ。宇宙人にとって3回目のモーション・ブルー公演なだけに、このハコに合ったライヴを作ってきたなと思わせるものになった。
つまり、シックなテイストで始まったのだ。「不用大腦(Brainstoning)」は、フュージョン風の落ち着きすら感じさせるアレンジ。小玉(シャオユー)のヴォーカルにも落ち着きがある。
続いての「你以為(Hello Princess)」。これもアルバム「RIGHT NOW」から。アップテンポでも大人の魅力がある。ベースの方Q(ファンキュー)のチョッパーが気持ちよいと思っていたら、途中から、バンドのアクションが大きくなり、ギアが上がった。この曲では小玉がヴォーカルに専念しているので、ギター、ベース、ドラムスだけの音だが厚みがある。阿奎(アークェ)のギター・ソロも期待にたがわぬ演奏で、バンドが一層アップグレードしたことを確信した。
3曲目は「要去高雄(高雄に行かなきゃ)」。底抜けに明るいポップなこの曲がR&B化している。アルバムでの曲は渋谷系テイストを感じさせるが、モーション・ブルー・ヴァージョンは、ファンクだ。
このように今回のライヴでは、今までにないファンキーぶりを見せる曲がいくつもあった。これがとても面白く、宇宙人というバンドが本来持っている魅力を見せることにもなっている。この曲では小玉のキーボードが相当ファンキー。
今回のライヴの合言葉は、ファンク、と感じていたので、ライヴ後に挨拶した時、ファンクでしたね?と言ったら、そう聞こえたら嬉しいよ、と小玉に言われた。宇宙人のライヴはこれだから楽しい。サウンド・アレンジで常に新しいものを持ってきてくれる。そしてそれは相当な練習を積み重ねた結果に違いない。ライヴ中でも、何度もメンバー同士のあうんの呼吸が見れた。
3曲目が終わり、MC。
小玉「こんばんは~。暑い(とジャケットを脱ぐ)」。そして、ライヴしょっぱななのに「おなかすいた~」(笑)。「横浜に来られてうれしい。次の曲がファンの皆さんが選んだリクエストの1位の曲です」と言い、始めたのが「不簡単(Not Easy)」だった。あまりライヴでは聞けない曲。シングルとしてリリースされたこの曲は、小玉がしみじみと歌いあげる良質のポップだ。ファンの皆さんがピュアでまっすぐで素直なメロディを愛しているのだ、と納得。
ちなみに、このライヴの前にファンのかたから宇宙人に歌ってほしい曲のリクエストを募っていたのだが、結果、2位は「一桌菜(Taste of Home)」、そして3位は「要去高雄(高雄に行かなきゃ)」だったそうだ。
ライヴ続いては「一萬小時(10000 Hours)」。あの、アルバムに入っている無機的なデジタル音にのる小玉のセクシーなヴォーカルが再現される。
方QのMC。「ただいま~。横浜の公演は3回目、皆さんとはファミリーみたいな感じがする」
小玉「方Qの日本語グッド」
方Q「スペシャルの曲を用意しているんだけど、この後まだ発表してない新曲をします」
「荷爾蒙爆炸(ホルモン爆発)」から「踢踢他(ヤツを蹴っちゃえ)」へ。このあたりから、宇宙人の今回のコンセプト”ファンク”が爆発する。70年代ソウル・ミュージック全開のアレンジ。スペイシーな音も聞こえ、アメリカの伝説的番組「ソウル・トレイン」を観ているようで興奮。踊りたくなる。方Qのベースもクールで、Pファンクな音も聞こえ、そうかと思うと、キーボードでホンキートンクのような音があったりと、とにかくむちゃくちゃかっこいいサウンドが続く続く。
こんなサウンドを聞かせられるバンドって中華圏でも宇宙人しかいない!
この一連の最後に奏されたのが、「Play One」だ。これが近日リリース予定の新曲。メロディ良し、アレンジ良し、宇宙人というバンドの、巧者ぶりを堪能した。
小玉が立ち上がりアコースティック・ギターを持ち、「昨日は雨だけど、今日は良い天気だから大好き」というMCの後に、台湾語の「兩人雨天(Rainy Day)」を。小玉の歌うメロディに阿奎のギターがユニゾンで絡む。ここに乗るまたまた小玉のセクシーなヴォーカルがたまらない。全体のテイストは、リズム&ブルース。
小玉「いつも僕たちばかり話していて、ドラムスの小胖(シャオパン)は話さないね」。すると小胖、日本語をドラムスの音で表現。それを宇宙人のメンバーが当てっこしていて、とても楽しそう。「みなさん」「私は小胖です」を音にしていたが、さすが宇宙人、正解を出していた。まさにトーキング・ドラム(実際こういう奏法はアフリカにあるのだけれど)ですね。
阿奎コーナー。
「How are you? 今度は僕が歌う、”夏のあこがれ(心向夏天)”」。アコースティック・ギターで歌う阿奎。ポップスの王道みたいな可愛い曲。小玉がニコニコしている。方Qが阿奎に寄り添うように弾いている。愛されているなあ、阿奎。「横浜、なんて美しい街なんだ。君のようだよ。僕と一緒に歌う?」とマジに言う阿奎も素敵だ。
ドラムのソロが始まった。小胖のドラムはとても重い。それに3人が加わり始まったのが「寂寞之上(Alone Together)」。天気の良い日にランニングをしながら聞きたいような、清々しく気持ちのよい曲。こういう宇宙人もとても素敵。と思うと、方Qのファンキーなベースが聞こえ、「這就是我愛你的方法(That’s the Way I Love)」へ。会場手拍子、足踏み。どの人も笑顔だ。座っているのが辛くなるほど、ノリノリのナンバー。そして、小玉が「最後の曲」と言うと、会場じゅうから残念の叫びが。しかし、無情にも時間は過ぎてゆき、「Hey」が始まった。小玉が「座って踊ってね」と言っているが、辛い(笑)。ファンキーなギター・カッティング、メロディはもちろん彼ららしくとてもポップなんだけれど、でもサウンドはとても高度なファンク。彼らがいかにソウル/ファンクあたりを聞きこんでいるのかがわかるようなすごいアレンジ。踊る小玉。そして、「Yokohama、I love you!!」。宇宙人も皆笑顔。本当に音を楽しんでいるのが伝わってくる。最高潮に盛り上がったところで、1回終わり。
そして、アンコール。宇宙人にとって最新の、先月リリースされた台湾語の曲「一桌菜(Taste of Home)」。故郷のテイスト、お母さんのお弁当のような曲だよ、と言ったように、新しい宇宙人が聞けるバラードだ。この曲はちょうど春節の時期にリリースされただけに、台湾語がわかる人たちは、思わず涙が出てしまうそうだ。歌詞がわからなくてもグッとくるから、歌詞がわかったら泣いちゃうだろうなあ。
阿奎「最初にアルバムを出したのが2009年だから今年は10周年だね。色々なことを思い出すよ。ありがとう。これからも良い時間を過ごそう」
小玉「モーション・ブルーは3回目。僕の日本語は良くなってきているよね。いつか、日本語だけで話せるように。次の10年で(笑)」
方Q「(日本語で)デビューから10年、ありがとう。20、30、40年もね」
そして最後の曲「這樣那樣(This That)」。
実は、この曲、去年の9月の東京のライヴで、小胖がすっ飛ばしてしまった曲なんだそうだ。
曲は多くがドラムスで始まるから、去年のWWWでは小胖がこの曲じゃない音を叩き初めてしまったので、結局演奏できなかったという事があったそう。ゆえに、「小胖が忘れたんだよ~」とメンバーにあらためて突っ込まれ、小胖、このライヴで最初で最後にしゃべった。「ごめんなさい!」と立ってお辞儀。 とうことでリベンジ・ライヴになった「這樣那樣(This That)」だが、ここでも宇宙人の音楽の進化がまたまた感じられた。小玉のヴォーカルがイロッぽいなあ、と思っていたら、この曲の読み方「ジェーヤンナーヤン」と一緒に歌おうと。そして小玉、「もっとセクシーに~」と要求。ちょっと「ラブホテル」って聞こえたけど、これは空耳でしょうか(笑)。
こうやって、今回も最高に楽しい宇宙人のライヴが終わった。
宇宙人は、ライヴを観るたびに様々にアレンジを替えてくるし、それが本当に嬉しい。ほんと、こういうバンドって中華圏にいない。ポップでキャッチーなメロディを書けてサウンドは相当ファンキー、ステージはエンタテインメント。
以前、イヴェントでご一緒した時話す機会があったが、宇宙人というバンドをどうすべきか、これから何をすべきか、ということを彼らは本当に真剣に考えている。そして、次に会うと新しいことを持ってくる。そういうアーティストって応援したくなる。宇宙人を観るといつもそう思う。
宇宙人の個性ってなんなんだろうと考えていた。思いっきりっファンクやブルース的なことを聞いている時はおなかにずんと来るのだが、終わった後に格別な爽快感が残る。そこが今回感じた彼らの魅力。
宇宙人は日本というマーケットでももっと面白がられるはずだ。だから、もっともっと日本で活動をしてほしいし、個人的には、今回のライヴの路線を突き詰めれば、日本でも中華圏でも、宇宙人にしか出来ないことを成し遂げられると感じた。さて、オフィシャルサイトには、今年東京近郊での最後のライヴかも、と書いてあったが、じゃあ、来年1月に(笑)、お願いします。次はどんな宇宙人が観られるのか、彼らの、まだまだあるであろう深い深い音楽性を、感じたい。
文 : 関谷元子 / 撮影 : 木島千佳
宇宙人 (Cosmos People)
・小玉 (シャオユー/Vocal & Keyboard)
・方Q (ファンキュー/Bass)
宇宙人 (Cosmos People)は、小玉(シャオユー)と阿奎(アークェ)によって2004年に結成。
高校の同級生だった2人は、好きな音楽が一致して意気投合、ダンス・ミュージックやファンクに日々夢中になりつつ、卒業後にバンドを結成した。
以来10年近くに渡って、曲作り/レコーディング活動とライブ活動に精進してきた。
幾度かのメンバー・チェンジ後、現在は高校時代の先輩でもある方Q(ファンキュー)を加えた3ピースバンドとして活動中。
台湾ではMayday(五月天)と同じレーベル”相信音楽”に所属。
年間100本以上のライブを行い、昨年3000人を動員するTICC台北國際會議中心での大型単独ライブを開催・成功させる。
CM/広告にも多数抜擢、さらには香港やシンガポール、中国大陸でのワンマンツアー、USの世界的音楽フェス”SXSW”にも出演するなど、その実力・注目度は台湾を飛び越えて急上昇中!
◆ Official Site ⇒ https://cosmospeople.jimdo.com/
◆ Facebook ⇒ https://www.facebook.com/cosmospeople
◆ Twitter ⇒ https://twitter.com/CosmosPeople
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