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2014.10.06 UP

[Music Go Round] インタビュー あらかじめ決められた恋人たちへ

リーダーの池永正二を中心としたユニットとしてスタートし、いまではその轟音ダブ・サウンドでライブバンドとしても評価の高い「あらかじめ決められた恋人たちへ」が、ライブDVDと新曲収録のCDがセットとなった『キオク』をリリース。タイトルにも、リリース形態にも必然の感じられる、現時点でのあら恋の集大成ともいえる作品となっている。池永自身に話を聞いた――。

Interview & Text : Joe Kuron

―― 池永さんとは、今年3月のドキュメンタリー監督の松江哲明さんの結婚パーティでもお会いしましたね。渋谷WWWで僕が司会をして、あらかじめ決められた恋人たちへ(以下、「あら恋」)のライブもあって。
池永「あれ、すごいパーティでしたね(笑)。僕ら以外に前野(健太)くんやGOMAさんや町あかりさんのライブもあって」

―― その渋谷WWWでは、2011年の年末に松江監督の『ライブテープ』とあら恋が対バンしたこともあって、あの時のあら恋のステージもすごく記憶に残ってるんですよね。
池永「そもそも映画とバンドの“対バン”っていうのがおかしいですからね(笑)」

―― 柴田剛監督が撮ったあら恋の「back」のPVを模して、あら恋が「back」を演奏しているときに背後のスクリーンに『ライブテープ』を逆再生した映像が流れて。震災のことがまだ生々しい時期だったしもしたので、すごく心を揺さぶられたのを覚えてます。
池永「そうでしたね。あの年はフジロックも「あるんかな、ないんかな?」ってことがあったりして」

―― あの年はアルバム『CALLING』が出て、ライブバンドしても評価の高まった時期でしたよね。
池永「フジロック以外にも、ライジング・サン(・ロックフェスティバル)とか、朝霧JAMとか大きなフェスにけっこう出させてもらいましたね。一人でやってる時期もありましたけど、やっぱり「バンド好き」っていうのが根っこにあったんですよね(笑)」

―― 基本はエレクトロ・ダブですけど、ハードコアとか、シューゲイザーとか、エモとか、そういった要素がバンドサウンドの中で溶け合うことでぐっとスケール感も増しましたのを感じました。と同時に、インストだし、MCもないし、インタープレイを見せつけるわけでもなく、ストイックな側面もあって。
池永「やっぱりそこはシンプルでいいと思うんですよね。ジャムバンドみたいなものは他にもあるんで、僕らがそこにいかなくてもいいかなと。曲や曲順の構成だけで物語をつくっていくような感覚なんです」

―― そうしたサウンドは昨年のアルバム『DOCUMENT』でさらに進化して――。
池永「バンドに慣れてきたんでしょうね。メンバーに委ねる部分も出てきましたし」

―― 今回、その『DOCUMENT』のレコ発ツアーをDVD映像と、新曲を含むCDがセットとなった作品「キオク」がリリースされます。DVDのほうはライブ映像が中心に構成されてますね。
池永「DOCUMENT」って「記録」っていう意味でもあるじゃないですか。だからこそ記録を残しておきたいってことがあって。あと、ここらで一つのピリオドを打って、次の段階に進みたいなっていうのもあったんです。ただ、いわゆる普通のバンド物のドキュメンタリーとかだと、ツアーを時間軸で追いながら、僕らの素の状態、例えば搬入とかリハとかそういう舞台裏の映像を見せたりもするんでしょうけど、そうはせずに、音楽そのものを映像で見せようと思ったんです」

―― あら恋の演奏が切れ目なく進んでいきながら、様々な風景が流れていきますね。
池永「あれは僕らがツアー中に巡った場所の風景や町並みなんです」

―― ロードムービーっぽくもありますけど、ずっと音楽が続いていくので、真剣に観てもいいし、流しっぱなしにしておいても気持ちいい。
池永「そうなんですよね。いわゆる「バンド・ドキュメンタリー」ではないし、「ド映画」でもない、「ド・ドキュメンタリー」でもない。記憶を旅しながら、ライブを追体験というか、脳内再生してもらえるようなものになればな、と」

―― 画像の質感とかもかなりこだわってますよね。「前日」で画面がカラーに切り替わる瞬間はかなりアガりました。
池永「実際、ライブでもあそこでグッとアガるんですよ。なので、映像でもさらにもっとアゲたいなと」

―― あら恋の音楽って、池永さんの鍵盤ハーモニカの音色も大きいと思うんですが、どこかノスタルジックな感情を掻き立てられるところがある。今回のタイトルの「キオク」っていう言葉は、まさにそのイメージが反映されてるんですけど、ただカタカナにしているところにこだわりも感じます。
池永「言葉で「どーん」って限定してしまうのはイヤなんですよね」

―― 「キオク」を漢字にしてしまうと……。
池永「「記憶」でしかないでしょ? カタカタにすることでなんか真ん中に空洞ができる。そこに流れこむものがあら恋っていうか。フワフワしてて落ち着かないというか、ザワつくというか。ホントはハッキリさせたいんですけど(笑)、でもそこに惹かれてしまうんです」

―― そこはまさに聴く人に委ねられてる部分でもありますね。
池永「そう、ちょっとぼやかしてね(笑)。今回、映像の終わりが冒頭にまた戻っていくような構成なんですけど、その終わりのところにちょこっと言葉を入れたんですね」

―― ええ、テロップが出ますね。
池永「最初、いまよりもハッキリした言葉を書いてたんです。でも、言い過ぎたらダメだなって書き換えて。夜に書いてたことが、翌朝には恥ずかしくなっちゃう、みたいな」

―― 思春期のラブレターみたいな(笑)。あら恋の曲ってインストで言葉はないですけど、池永さん自身が言葉から喚起されるものは多いんじゃないですか。
池永「多いですね。小説とか、キャッチコピーとか。とくにダブルミーニングが好きなんですよ。両義的というか」

―― イメージを限定するんじゃなく、より広げていくための言葉ですよね。たしかにそれはあら恋の音楽のイメージにそのまま繋がりますね。さらに言葉で言うと、今回、「キオク」っていうタイトルでDVDとCDがセットじゃないですか。CDのほうには新曲が入ってて、しかもそのタイトルが「Going」。
池永「現在進行形にしたかったんですよね。「キオク」が未来にも続いていくっていう」

―― ハウスっぽい盛り上がりのある曲ですが、どことなくマンチェスターっぽいところに池永さんのルーツが垣間見えますね。
池永「ダンス・ミュージックをやってみたらニュー・オーダーになっちゃった、みたいな(笑)」

―― やっぱり80年代のマンチェスターや90年代のオルタナといったバンド・サウンドを通ってきた人なんだなと思いました(笑)。しかも、アメリカのインディもいまモードがこのへんの音に寄ってますからね。
池永「意図せずして、旬になってる(笑)。僕、常々、男は40からだと思ってるんですよ。これから時代が来るのかも(笑)」

―― キノコ帝国の佐藤さんがソロ名義のクガツハズカムでヴォーカル参加した「BY THIS RIVER」(ブライアン・イーノのカバー)もいいですね。モノクロームな感じで。
池永「でしょ? 映画的な雰囲気があって」

―― 佐藤さんの声とすごくマッチしてますね。
池永「ね、ポーティスヘッドっていうか」

―― やはりゲスト・ボーカルにeastern youthの吉野寿さんを迎えた「Fly」は、DVDのエクストラ映像にライブも収録されていて。
池永「そう、この曲がDVDとCDの両方に入ることで、過去と未来の「キオク」の接点になってるところがあります」

―― 吉野さんのヴォーカルも、バンドに拮抗するというか、佐藤さんとはまた違った方向であら恋の世界を引き出してますね。
池永「ホント全身全霊で向かってきてくれて。ありがたいですよ」

―― フィーチャリングというカタチではありますけど歌モノがあったり、サウンドの方向性も広がっていく中で、より活動の自由度が上がっているのを感じますね。
池永「やっぱり自信がでてきたんでしょうね。何をやってもブレないって思えるようになった。やってみて「違うな」と思ったらボツにすればいいし。だいたいのことは自分のフォーマットに落とし込めるようになってきましたね」

―― 次なる展開も楽しみです。
池永「最近はバンドありきのところもあったから、いったんその意識から離れて、さらに好き勝手なことをやってみたいっていうのを思ってますね。初期衝動が戻ってきたというか」

―― 旅をして最初に戻ってくるっていうのは、まさに『キオク』という作品のテーマでもありますね。
池永「うまいこと繋がった(笑)」

―― そして、「男は40から」という発言もありました(笑)。
池永「ええ、もうがんばりますよ!」



あらかじめ決められた恋人たちへ

叙情派インストゥルメンタル・ダブ・ユニット。メンバーは池永(鍵盤ハーモニカ、track)、kuritez(テルミン、Per、鍵盤ハーモニカ)、劔樹人(Ba.)、キム(Dr.)。さらにPA、照明、映像、サポートギターも含めた組織体として機能している。そのセンチメンタルなメロディと身体を突き上げるほどの轟音、さらに喜怒哀楽すべてを表現したライブパフォーマンスが“泣きながら踊れるインスト・バンド” として話題となり、各地のフェスを席巻。また、映像を全面的に導入し、コンセプチュアルな世界を紡ぎ出すワンマンライブ「Dubbing」シリーズも開催している。

◆ オフィシャルサイト
http://arakajime.main.jp/

あらかじめ決められた恋人たちへ「キオク」
あらかじめ決められた恋人たちへ / キオク
DQB-63 / 3,333円+税
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(第一週目放送後、1ヶ月リピート放送)

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しゃべりの達人ではないけれど、熱い気持ちで音楽を勧められる音楽キュレーターが曜日代わりで登場します。木曜日はSPACE SHOWER MUSIC が担当! 宣伝担当が毎月出演、インディーズアーティストを中心に良質な楽曲を選曲していきます。
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