バックナンバー

2014.07.10 UP

MusicGoRound20140710


シンガーソングライターの王舟がファースト・アルバム『Wang』を完成した。すでに2010年にCD-R作品を2枚もリリースしていることから考えるとずいぶんゆったりしたペースにも思えるが、その時間をかけた歩みには意味がある。豊穣で風通しのよい傑作『Wang』が生まれた背景を、王舟自身に語ってもらった。

Interview & Text : 九龍ジョー


―― ついにファースト・アルバム『Wang』が完成したということで、おめでとうございます。2010年にCD-R作品が2枚(『賛成』『Thailand』)リリースされて、フルアルバムもすぐに出るかと思いきや、実に4年かかりましたね(笑)。
「こんなに時間をかけるつもりじゃなかったんですけどね(苦笑)」

―― 曲自体は早くからできていたわけですもんね。
「そうなんです。ただ、CR-Rは自分ひとりで作ったんですけど、アルバムは録音も含めて、いろんな人のチカラを借りたいなと思って。それもできるだけリラックスした感じで進めたくて。そしたら、リラックスしたぶんだけ進行はゆっくりになり……」

―― まあ、アルバム制作は時間がかかりましたけど、その間、ライヴも含めていろいろと音楽活動はしてましたからね。いまになって僕が面白いと思うのは、「KING FILM」なんですよね。2011~12年ぐらいにかけて王舟くんがやっていた映像プロジェクト。
「ありましたねー(笑)。あれ、最初がceroの高城(晶平)くんとシャムキャッツの夏目(知幸)くんの共演。しかもあの2人がまだ出会ったばかりの頃なので、すごく貴重な映像ですよ」

―― 曲も「よるべなき旅」っていう、あそこでしか演ってないオリジナル曲で。撮影場所は阿佐ヶ谷の〈ROJI〉っていう高城くんの拠点ともいえるバーでしたよね。あのプロジェクトはどんなことを考えてやっていたんですか?
「やっぱりリラックスした空気というか……ほら、ライヴとか音源って、人に何かを提示するっていう前提で音楽を鳴らすじゃないですか。でも、そうじゃない音楽のパッケージの仕方もあるよなぁって思ったんです。というのも、例えばライヴスペースの〈七針〉で誰かのライヴがあるとき、僕はだいたいリハーサルから遊びにいくんですね。するとリハの空いた時間に、出番が前後するミュージシャン同士がちょっとしたセッションを始めたりするんですよ。そこで鳴らされるようなリラックスした音楽が好きなんです。ぼんやりと何かがカタチになったりならなかったりするような。そういう空間って、リハの時間が終われば消えてしまう。『だからいいんだ』とも言えるんですけど、でもそれに近いような状態を映像で記録してみたら面白いんじゃないかと思って始めたのが、『KING FILM』だったんです」

―― なるほど。いま〈七針〉っていうスペースの名前が出ましたけど、王舟くんが本格的に音楽活動を始めた00年代後半ぐらいから、従来のライヴハウスよりももう少し小規模で、気軽にミュージシャンが演奏できるようなスペースが増えてきましたよね。
「ええ、僕が最初に知ったところだと、〈円盤〉や〈無力無善寺〉とかですかね」

―― 高円寺のね。ただ、あのへんはもうちょっと前からあって、現在の東京インディ・ミュージックの拠点と言ってもいいと思うんですけど、例えば〈七針〉がちょっと変わってるのは、八丁堀っていう東東京のオフィス街にあるわけじゃないですか。
「たしかに、日曜なんてぜんぜんヒト気がないし、ドトールとかも閉まってますからね(笑)。最初は麓健一さんのライヴを観にいったりして知ったんですよね。当時の僕はバンドをやってて、ノルマがあるようなライヴハウスに出てたんですけど、〈七針〉はまったく雰囲気が違った。出入り自由な感じがしましたね」

―― 新しい出会いも多かったんじゃないですか?
「oono yuukiくんとかmmmとかフジワラサトシくんとか」

―― みんな、今回のアルバムにも参加しているミュージシャンたちですね。
「そう、〈七針〉で仲良くなったんですよね。ライヴが終わったあとに、誰かがドラムを叩いたら、その場にいる出演者以外のミュージシャンも混じってセッションを始めたりするような、そういう自由さがあったんですよ」

―― その有機的で自由な感覚は王舟くんの音楽に一貫しているし、今回のアルバムにも詰まってる気がします。
「よく思うのが、画家が絵を描くじゃないですか。その完成した絵を見るのもいいんだけど、描いてる過程を覗き見るのもけっこう楽しいんじゃないかっていうことで。何かがカタチになっていく過程の空気が好きなんですよ」

―― そういえば、僕が王舟くんと初めてちゃんとしゃべたのは、「KING FILM」の第二弾の時で。王舟くんもバイトをしていた渋谷の〈なぎ食堂〉で今回のアルバムにも入ってる「New Song」っていう曲の演奏風景を撮影するから、そのメイキング映像を撮ってくれてって頼まれて――。
「しかも、そのメイキング映像をまだもらっていない!(笑)」

―― すみません(笑)。本編はすでにYouTubeにアップされてるけど、いま話を聞いてて、「ああ、すごく重要なことを任されてたんだ」ってことに気づきました。
「そう、メイキングは大事なんですよ。あれはちょうど『New Song』を作ったばかりで、演奏してくれたみんなには事前に弾き語りだけの簡単なデモしか渡してなかったんですね。それをもとにそれぞれアレンジを考えてきてくれて。フルート奏者を2人誘ったんですけど、すごく綺麗な旋律とかを用意してきてくれた。そういうのがあるとみんなテンション上がるじゃないですか。そんな雰囲気も、記録しておきたかったんですよね」

―― 今度、素材をお渡しします(笑)。ちなみに今回のアルバムでは、参加ミュージシャンとどんなふうにイメージを共有したんですか。
「やっぱり僕のデモをベースに、みんなで合わせてみる感じですね。なので僕がもともと考えていた曲の解釈とは違うものができあがったりもする。それを、客観的な良い悪いを意識しながら仕上げていくんですけど、結果的に8割ぐらいは、みんなが独自の解釈でやってくれた部分が残りましたね」

―― 最終的なサウンドが一番大事ではありつつ、その前提となる場所や過程の空気もとても大事にしてますよね。
「いつもアドバイスをもらってるトクマル(シューゴ)さんなんかも、音楽そのものが好きなのと同時に、その音楽が鳴らされる場所を作ったりするのも好きだって言ってて、それは自分の考えてることにも近いかも。音楽をきっかけにして人と人とが繋がっていくようなことが面白くて、こういう活動をやってるようなところはありますね」

―― そういう場所の空気がアルバムへと熟成するために必要な時間だったと思えば、4年という時間はけっして長くはなかったのかも。
「たしかにそうですね」

―― どうですか? 改めてアルバムができあがってみて。
「まだ実感はわかないです(笑)。マスタリングが終わった時に、『ああ、できた』っていう事務的な確認はしましたけど。ひとまず音はできた、と。でも、それもまだ何かの途中だっていう感覚なんですよね」

―― 王舟くんらしいですね。たしかにアルバムは一つの経過点ではあるけれど、クオリティという意味でも、時間を越えて、きちんと残る作品になったと思いますよ。。
「ありがとうございます。まさに、自分にとっては何年か経って、振り返ってみて、ようやく『どういう作品だったんだろう?』ってわかるのかもしれない。ただ、アルバムができたことで、まだ僕のことを知らない人たちの耳にも届く機会が増えますよね。ここからまた新しい出会いが生まれていけばいいなと思います」


王舟 PROFILE

2010年、自主制作CDR「賛成」「Thailand」をリリース。 以降、東京を中心にソロ、デュオ、バンド編成など、様々な形態でライブ活動を行う。 2014年、いつまでたっても出ないと思われていた1stアルバム「Wang」をfelicityからようやくリリース。

◆ 王舟 OFFICIAL SITE
http://ohshu-info.net/

LIVE INFO

■ 2014.07.12 @神戸・旧グッゲンハイム邸
RUBYSTAR presents 王舟 “Wang” release party
■ 2014.07.13 @京都 METRO
SECOND ROYAL presents 王舟 “Wang” release party
■ 2014.07.17 @渋谷 WWW
felicity presents 王舟 “Wang” release party
■ 2014.08.01 @タワーレコード NU茶屋町店 イベントスペース
王舟 ALBUM『Wang』発売記念ミニライブ&サイン会
■ 2014.08.02 @名古屋・金山ブラジルコーヒー
Summer Of Fan presents 王舟 “Wang” release one man
■ 2014.08.03 @タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
王舟 ALBUM『Wang』発売記念ミニライブ&サイン会

※詳細はアーティストオフィシャルページでご確認ください。

王舟 『 Wang 』

Wang
PECF-1099 / 2,300円+税

MusicGoRound

毎週月~金 20:00~22:00 ON AIR
(第一週目放送後、1ヶ月リピート放送)

ニッポン放送によるインターネットラジオ、Suono Dolce内番組「Music Go Round」。
しゃべりの達人ではないけれど、熱い気持ちで音楽を勧められる音楽キュレーターが曜日代わりで登場します。木曜日はSPACE SHOWER MUSIC が担当! 宣伝担当が毎月出演、インディーズアーティストを中心に良質な楽曲を選曲していきます。

◆ Music Go Round オフィシャルサイト
http://www.suono.jp/mgr/

timetable

SuonoDolce

mail



関連スケジュール