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2019.11.06 UP

2018年6月のデビュー以来、多くのクリエイターから愛され続ける新世代シンガーソングライター、eill。多才ぶりを発揮したファーストアルバム『SPOTLIGHT』で彼女が伝えたかったこととは?デビューから1年半を経て起きた心境の変化や今後への展望を語ってくれた。


eill——2018年10月に出したミニアルバム『MAKUAKE』を経てリリースされた今回のアルバム『SPOTLIGHT』は、どんな作品をめざしたんですか?
eill:前作の『MAKUAKE』は、ダンスミュージックとかクラブでかかる曲っていう感じをイメージしていたんですけど、今回はイヤフォンで聴けるクラブミュージックをコンセプトにしたんです。というのも、私の音楽が聴いてくださる方の生活の一部になったらいいなとずっと思っているので。クラブのようにたくさん人がいるところというよりは、ひとりひとりに聴かせるイメージで曲をつくっていきました。

——今回は前回よりポップな方向にアプローチしているなと思いました。作風の変化にはどのような思いがあったんですか?
eill:高校生の頃に作っていた曲はJ-POPっぽいものが多かったし、自分からもともと出てくるメロディーは結構ポップ寄りのものが多いんです。でもクラブミュージックも好きだし、ブラックミュージックも好きだから、そういうテイストを採り入れてやってきた。今もそういう音楽は大好きで自分の根本にあるんですけど、今回はもうちょっと自分から素直に出てくるメロディーを活かしたというか。ポップなものを作りたいという気持ちもあったので、自分の気持ちをクッとJ-POPの方にシフトしたんです。

——それもあって、今回、宮田’レフティ’リョウさんをプロデューサーに迎えたんでしょうか。彼とは本作最多の3曲を作っていますね。
eill:宮田さんとはライブのバンドメンバーとして知り合ったんですけど、特にセッションをやりやすい人なんです。宮田さんは打ち込みもできるので、こういうメロディーを歌いたいからこういうトラックが欲しいと言うとバーッとすぐ作ってくれるし、私はピアノで曲をつくるんですけど、宮田さんはギターも弾けるし、鍵盤も弾けるので、自分では気付かない客観的な目線も入る。そういう指摘も参考になるんです。

——nabeLTDさんとも多くの曲を作っていますね。
eill:nabeさんはデビュー曲の「MAKUAKE」のときに初めて会って、それ以来ずっとアレンジをしてもらっていて。宮田さんと作った「SPOTLIGHT」もnabeさんがアレンジとピアノを担当してくれたんです。nabeさんは“オシャなeill”を司っている人というか。私がピアノを弾くといなたくなっちゃうんで、そこでキュンとくるようなお洒落なフィルターをかけてくれるスペシャリスト。eillサウンドを作ってくれているのはnabeさんかなって思います。

——その他、ミニアルバムから今作までに自分なりに成長や進化したと感じるところはありますか?
eill:『MAKUAKE』のときは自分のことしか考えていなかったというか。たとえば、この部分をライブで一緒に歌って欲しいっていうことはあまり考えないで曲を作っていたんです。そもそも今まで大きいステージに立ちたいと思ったことがなかったんですよ。日本武道館とか興味がなくて。でもライブを重ねていくうちに、自分と同い年の女の子が会場に来てくれるとか、私の曲を聞いてくれる人が目に入ってくるようになって。そうしたら大きいステージに立ちたいという気持ちがどんどん膨らんできて、自分の曲を元気の源にしてくれる人を増やしたいと思うようになったんです。それで今回のアルバムを『SPOTLIGHT』というタイトルにしたんです。

——タイトルにはそういう経緯があったんですね。
eill:自分の人生のスポットライトは自分で浴びに行くものだと私は思ってるんです。当てられるものではなくて、自分で光を奪いに行く感じ。そういう思いから名付けた『SPOTLIGHT』なんですけど、自分だけじゃなく聴いてくださる方の心も照らしたいっていう思いも込めているんです。だから、ライブでここを一緒に歌いたいっていう箇所を曲の中につくったり、お客さんとのコミュニケーションを初めてちゃんと意識してつくったアルバムなんです。

——「SPOTLIGHT」という曲は、いつ、どんなキッカケで書いたんですか?
eill:これは宮田さんとアルバム用の曲をつくる目的でセッションした内の1曲です。前作のときはわりと高音が多くて、私がもともと持ってるハスキーで低くて強めの声をあまり出してなかったんで、そういう曲を作ろうという目的でセッションしたんです。なので、サビの「Don’t you worry」のところのメロディーと歌い方を最初に作って、そこからできた曲なんです。

eill——この曲の歌詞の書き出しは、不甲斐ない自分に対する「ちくしょう」みたいな気持ちから始まります。そういう気持ちを抱えていたんですか?
eill:そう思うことしかないです(苦笑)。自分がしっかりしてないと周りの人についていきたいと思ってもらえないじゃないですか。だけど、アルバムを作ってるときも「自分ダメだ」「自分マジ嫌い」みたいにずっとなっていて。歌詞が書けない自分とか、プライベートでもしっかりできてない自分とか、いろいろあったんで。そんな思いからその歌詞を書き出したんです。そしたら書いてる最中、夜中の2時くらいにバンドメンバーから突然電話がきて。「俺さ、eillのこと信じてるから」みたいなメッチャエモいことを言われて。「自分ダメだなぁ。ひとりぼっちだなぁ。誰も味方してくれる人いないや」と思ってたけど、すぐ近くにメッチャ信じてくれてる人がいるんだっていうことに、その瞬間に気付いたんです。それで残りの歌詞を一気にバーッと書き上げました。ちゃんと周りを見たら自分のことを待ってくれてる人がいる、信じてくれてる人がたくさんいるっていうことに気付けたんです。

——デビュー後は、たくさんのシングルをリリースして順調そうに見えていましたが、孤独を感じるような時間もあったんですね。
eill:期待に応えなきゃとか、もっと上に行かなきゃみたいな焦りが出てきていて。自分のことなんだけど、自分がついていけないっていう。ちょうどアルバムの制作期間だったんで、忙しいし、寝れないし、でもやることあるし、みたいな。プレッシャーに押しつぶされてました。今年の夏くらいの話ですね。

——もうひとつの先行曲「この夜が明けるまで」は、どのような経緯で生まれたんですか?
eill:これも宮田さんとセッションで作りました。もともとは全然違う曲調で、もっとポップなエレクトリックサウンドだったんです。だけど、ある日突然、このメロディーは絶対にギターのイントロから始まって、サビはドロップだっていうアイデアが私に降りてきて。宮田さんに「この曲はそういう曲なんで、そうしてください」ってお願いしたんです。

——アレンジをやり直してもらった?
eill:そう。最初は「は?」「マジで?」とか言われて(笑)。だけど、宮田さんも「やってみたら、メッチャいいじゃん!」って。そこからサビも作り直してできあがりました。切ないラブソングで、ギターが激しい感じっていうアイデアが降りてきたんで、歌詞もそのときから方向が見えていました。

——歌詞では相手のことがまだ好きなんだけど、自分から別れを選択する女性を歌っています。そのときの胸が張り裂けそうな苦しさや切なさと、ノイジーなギターの音が重なり合いますね。
eill:eillの曲は結構ギターを前面に出していて。それも大事にしていこうと思ってるんです。曲を作っているのはeillだけど、シンガーソングライターというよりはバンド感というか。サウンド作りに関しては、“みんなでeill”みたいなのを大事にしてるんです。

——アルバムのジャケット写真は、パンツルックということもあってマニッシュな印象を受けました。
eill:この衣装は私服で、私が好きなブランドの服です。写真は地元のコンビニの駐車場で撮りました。今回のジャケット写真は、自分の中にイメージがあったから、まず自分でラフを作ってみようと思って地元の友達とコンビニの駐車場に行って、「これ持って」とか言いながら撮ったんです。そのときに車のブレーキライトで撮った写真があるんですけど、それはCD盤のスリーヴに使われてます。

——これまでのeillさんには、ビジュアルから受ける印象からか、“ふわふわ”とか“フェミニン”とか“ガーリー”っていうイメージがあるんです。
eill:わかります。ソフトフィルターっぽい感じですよね(笑)。

——でも、今回のジャケット写真からは、路上で撮っていることもあってか、タフさやラフさ、クールさが感じられる。
eill:ありがたいことに、eillのインスタを見て、かわいいと言ってくれる女の子が多いんです。でも、今までのビジュアルはそれとは違う方向になっていたので、「かわいい」の方向を変えたというか、角度を変えたっていうところはありますね。普段、インスタの写真とかはこういう場所で撮ってるんです。だから、普段着ている好きな服で、普段いる場所で、自分のありのままの姿を見せたいと思ったんです。

——イメージと実体をちゃんと近づけたいと。
eill:特に自分と同世代の人に私の音楽を聞いてもらいたいんです。そのためには等身大の自分を見せた方がより身近に感じてもらえるかなと思って、今回は今のeillを見せることを大事にしました。

——今回のアルバムの歌詞では負けず嫌いでアグレッシブな女性像が多く描かれていますが、強さを打ち出していきたいとも考えているんですか?
eill:そうですね。女の子がひとりで道を切り開いていくっていう。男の子とか誰かの手助けを借りず自分の人生を歩んでいくんだっていう思いはデビュー曲の「MAKUAKE」のときから変わってないんです。ラブソングの女王というよりは、そういう方向の曲をこれからも歌っていきたいと思ってます。

eill——人生応援ソングとか、日々の励みになるような曲?
eill:そうです。ちょっとした悩みって日頃たくさんあるじゃないですか。バイト行きたくないとか学校辞めたいとか。そういう悩みをちょっとでも解消する曲というか。私の曲を聞いて「明日も頑張ろ」って思ってもらえたらいいなって思ってるんです。

——こうしてファーストアルバムを出したことで本格的にキャリアが幕を開けました。今後はどのような道を進んでいきたいと考えていますか?
eill:今まで歌姫と呼ばれてきた人たちはファッションも含めてアイコンになってるし、生き方とか考え方に惹かれる方が多いと思うんです。だから、私もそう思ってもらえるような人間になるっていうのが1個目標としてあります。

——音楽面に関しては?
eill:今回のアルバムはいろんな曲調の楽曲が入っていて、同じ人間が作ってるような感じがしないと思うんです。実はそれがこれまで悩みだったんです。デビューに向けて動いていた頃も、スタッフに「1つに絞れ」みたいなことをメチャメチャ言われて。でも、絞れないんだよなぁ、全部私なんだけどどうしよう?みたいに思っていて。

——eillさんのソングライティングにはもともと多様性がありますからね。ルーツにはJ-POPも、K-POPも、ブラックミュージックもあって、ジャズヴォーカルまで習っていたわけだから。
eill:そう。だけど今回のアルバムで、これから先はそういうことを気にしないと決めたんです。“これが私だから”って堂々とやっていこうと。だって今はもうジャンルとか関係ないじゃないですか。サブスクが広まって、どこの国のどんな曲だろうが、どこでも聞けるから。きっと私と同世代の人はジャンルとか気にしないで私の音楽を聞いてくれているだろうと思うんです。だから、ジャンルの壁を作らず、変なこだわりはせずに、自分が日々の中で感じた出来事とか、自分がこういうシーンで聞きたいと思う曲、自分がいちばん良い思えるものを出して行きたいと思ってます。

——今年はフェスのステージにも立ちましたが、今後、ライブはどんな場所でやってみたいですか?
eill:私、虫がメッチャ嫌いで。野外フェスとか絶対無理!と思ってたんです。「外のライブはイヤ。蜂とか来たらどうするの?」とか思ってて。でも、「Local Green Room」と「りんご音楽祭」に出たらメッチャ楽しくて。もっと大きいフェスにも出たいと思うようになりました。絶対楽しいはずだもん。

——それは大きな変化ですね(笑)。
eill:虫よりもフェス楽しいー!みたいな。「りんご音楽祭」でアリを触れるようになったのが大きな進歩でした。

——アリに触れなかったんですか?
eill:ハイ。本当に無理で。アリがいるだけで、その道を歩けなくなるんです。「やばいやばいやばい、アリ踏んじゃう」みたいな。

——じゃあ、次はバッタで(笑)。
eill:えー、それはまだ無理だなぁ。でも、今までは本当にライブが苦手だったんですよ。けど、今は日々の楽しみがライブに変わって来た。お客さんに気持ちを届けるっていうことが本当に楽しくなってきたんです。デビューして1年半、やっと誰かに届けたいっていう思いが強く自分の中であふれたアルバムなので、まずはこのアルバムに込めた思いをいろんな人に伝えていきたいです。



eill『SPOTLIGHT』2019.11.06 Release
eill『SPOTLIGHT』
[収録曲]
01. SPOTLIGHT
02. この夜が明けるまで
03. Fly me 2
04. 20
05. Ma boy
06. ((FULLMOON))
07. Perfect love
08. Succubus
09. ONE LAST TIME (Prod.AmPm)
10. Succubus feat.Kvi Baba (grooveman Spot Remix)
11. 20 Acoustic ver
DDCB-12362 / ¥2,500+税
Download or Stream
https://ssm.lnk.to/spotlight


eill Profile

東京出身。SOUL/R&B/K-POPをルーツに持つ新世代シンガーソングライター。15歳からJazz Barで歌い始め、同時にPCで作曲も始める。10代から清水翔太のコーラスやPAELLAS、SKY-HI等へ客演で参加する。2017年12月、韓国ヒップホップ・アーティストRheehabとOceanと制作した音源「721」をSoundCloudに公開。2018年6月、SG「MAKUAKE」、7月には、高橋海(LUCKY TAPES)が参加した「HUSH」、10月にはミニアルバム「MAKUAKE」を発表。Apple Music「今週のNEW ARTIST」、SPACE SHOWER「NEW FORCE」、Spincoaster「BREAKOUT 2019」、HMV「エイチオシ」に選出されるなど、2019年に大きな飛躍が期待されているアーティスト。
2019年5月以降「20」、「ONE LAST TIME (Prod.AmPm)」、「この夜が明けるまで」等と配信シングルを連続リリース。11月6日に待望のファースト・アルバム「SPOTLIGHT」のリリース。TOWER RECORDS「タワレコメン」に選出されたほか、収録曲の「SPOTLIGHT」が全国30局以上の放送局でパワープレイに、MVもSSTV「POWER PUSH!」、M-ON!「Recommend」に決定。また12月にリリースされる韓国の人気5人組ガールズグループ“EXID”の2ndシングルにも作詞・作曲で参加するなど話題を集めている。

◆eill Official Site ⇒ https://eill.info/


ライブ情報

・eill 1st ONEMAN TOUR BLUE ROSE
■2019.11.16(SAT) @大阪 アメリカ村 BEYOND
OPEN / START : 18:00 / 18:30
■2019.11.17(SUN) @愛知 今池 GROW
OPEN / START : 17:00 / 17:30
■2019.11.28 (THU) @東京 渋谷 WWW
OPEN / START : 18:30 / 19:30

・eill|1st Album「SPOTLIGHT」Instore Event
■2019.11.09(SAT) 14:00~ @名古屋パルコ西館1Fイベントスペース
内容 : ミニライブ+サイン会(観覧フリー)
■2019.11.10(SUN) 15:00~ @タワーレコード難波店 5Fイベントスペース
内容 : ミニライブ+サイン会
■2019.11.24(SUN) 15:00~ @タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
内容 : ミニライブ+サイン会(観覧フリー)

・フロムニューエイジアツアー2019 – winter –
■2019.12.2(MON) @福岡 BEAT STATION
OPEN / START : 17:15 / 18:00
■2019.12.4(WED) @大阪 心斎橋 JANUS
OPEN / START : 17:15 / 18:00
■2019.12.5(THU) @名古屋 伏見 JAMMIN’
OPEN / START : 17:15 / 18:00
■201912.17(TUE) @東京 代官山 UNIT
OPEN / START : 17:15 / 18:00
出演者 : Rude-α, さなり, eill , SASUKE

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