Rei×信岡麻美
2017.07.26
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【対談】Rei×信岡麻美 音楽と写真が共鳴する作品「CRY」

シンガーソングライター・ギタリストのReiとフォトグラファーの信岡麻美。同じ1993年生まれのクリエイターがコラボレーションして、ひとつの作品が生まれた。Reiの新作「CRY」は、4曲入りのCDと、信岡がReiを撮り下ろした写真に、Rei本人の手によるコラージュを組み合わせたMUSIC BOOKからなる。同じ世代だからこその共感と信頼が感じられるこの作品はいかにして生まれたのか、ふたりに語ってもらった。


Rei×信岡麻美――おふたりが出会ったきっかけを教えてください。

Rei「最初はよく出入りしていた下北沢のライブハウスで会いましたよね」
信岡「会いましたね」
Rei「でも、最初は覚えてないくらいで。いつの間にかお友達だった感じです。でも、多分4年前とかかな」
信岡「誰に紹介されたかとかも覚えてないね」
Rei「うん。でもTumblrやinstagramで写真をあげているのは見ていたので。コムちゃん(水曜日のカンパネラ コムアイ)やNever Young Beachの勇磨くんとかを撮った写真を見ていて。いつか撮ってもらえる機会があったらいいなとは思っていたんです」

――Reiさんは信岡さんの写真を見てどういうことを感じました?

Rei「ここ4〜5年くらい、フィルムで写真を撮る方が増えていて、ちょっとした流行りみたいな感じも個人的にはするんですけど、その中でも彼女の撮っている雰囲気とか話しているときの感じとか写真から出る雰囲気は……すごい彼女の、フラットというか、見ている人に対して『好きに受け取ればいいよ』みたいな寛容さは感じましたね」

――逆に信岡さんは、Reiさんの作る音楽に対してはどういうふうに感じましたか?

信岡「最初に会ってからライブを見るまでに結構あいてたのかな。Reiちゃんって小柄であまり大きくないんだけど、ライブで観たとき、ステージの上でギターを弾いているときめっちゃ大きく見えて。そのときかなりビックリしたんです。ギャップがすごくて」

――お互いにものづくりをしていく中で通じ合う部分があるとは感じますか?

Rei「今回の作品を作っているときに、こんなのにしたいよね、みたいな話をしたんですけど、そういう、『これがいいよね』とか『これがかっこいいよね』みたいなのがいつも重なっている感じがする。視覚的な部分とか、何かをリファレンスにして作品を作ろうというときに、その感覚は大きく違ったりはしないかな」

――今回こういう形で一緒にひとつの作品を作るということになったんですが、このタイミングでこういうことをやろうと思ったのはどうしてですか?

Rei「これまで3枚のミニアルバムを作ってきて、それが3部作だったので自分にとってはひとつの季節が終わったという感覚があったんです。そこで別の表現方法を使って、音楽の聴こえ方が変わったらいいなという想いがあって、ミュージックブックという名前がついてます。そのときに前々からアズちゃん(信岡麻美)に写真を撮っていただきたいと思っていたので、声をかけたという感じです」
信岡「一回、仕事とは全然別で、写真撮ろうよと誘ってくれたことがあって。結局実現しなかったんですけど、Reiちゃん、Instagramとかもすごいこだわりがあるのが見ている側もわかるし、かわいいと思うものが近いから、一緒にできたらいいなと思っていて。それが今回仕事で一緒にできて、すごくよかったです」

――CDに写真集や豪華なブックレットをつけるというのはたくさんありますけど、今回の場合、CDがあって、そのおまけとしてブックがあるというものではないですよね。

Rei「そうですね。付属ではない、ひとつの作品です。これまで自分が好きだった音楽ってアートワークと共にあったというふうに考えていて。The Beatlesの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』とか、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファーストの、アンディ・ウォーホルのジャケットとか、そのアートワークがあるから音楽の聴こえ方が変わる体験をしてきたので。視覚的な作品がついていることによって音楽の感じ方がより楽しく、豊かになればいいなという想いで作りました。でも、MUSIC BOOKを作ると一口に言っても……本を作ったことがないから。基礎もないしデザインに対して教養もないので、最初アートディレクターさんに手伝っていただいて入装丁とかやってもらったほうがいいんじゃないか?と思っていたんですけど、でも、こういう不慣れなことをやるけど楽しんでそこにぶつかっていっている姿勢というのを見せたいなって。同世代の人といろいろ意見を交わしながら作っている姿勢が伝わったらいいかなと思っていました」

――確かに、こういうものを作るときは通常はアートディレクターさんがいますよね。でもそういう形ではやりたくなかったんですね。

Rei「彼女(信岡さん)はプロですし、そこはバランス取れているのかなという気持ちにもなっていたし」

――でも不安だったんじゃないですか?

Rei「不安でした(笑)。でも、まわりのスタッフさんもアズちゃんもそうだけど、それでいいじゃんっていう後押ししてくれる人もまわりにいたので、気持ちを強く持てましたね」

――実際に出来上がったものを拝見しても、すごく大変だったろうなというのと、でもそこまでやったからこそ、これもひとつの作品として成立するものになったんだろうなって思います。実際やろうとなってからふたりでコンセプトとかを話しながら進めていったと思うんですけど、そのへんのところはどういうものにしようという話をしていたんですか?

Rei「今回、アズちゃんと一緒にやって、ヘアメイクさんも女性の方だったんで、以前と比べて女子が多い現場だったんですよ。だから、そのフェミニンな感じというか、女性の強さとかしなやかさがにじみ出たらいいなと思っていました。意図せずともそれが出たとは思います。」
信岡「打ち合わせのときに、みんなでInstagramとかを見ながらこういう感じがやりたいとかいろいろ言ってくれて。その時点で感覚は近いものがあったからやりやすかったですね」
Rei「でも、結構演出のアイディアは出たんですけど、結局現地に行ったら、その場にあるもので」
信岡「結構場所のパンチが強すぎて(笑)。ロケハンもしていたわけじゃなくて。当日行って、みんなで歩いて、ここで撮ったら良さそうとかをなんとなく話して。その日くもりであまり天気がよくなかったんですけど、急に太陽が出てきたから外のほうで撮ろうとかそういう感じで」

――確かにその臨場感は見ていてもありますね。

Rei「普段の撮影している環境とどう違った? 大体そういう臨場感たっぷりな感じなのか、結構決め打ちが多いのか全然想像がつかないんだけど」
信岡「全然、綿密に絶対自分でやりたい絵があってそれに忠実に近づけていくっていう撮影の仕方は全然やってきたことがないので、本当今回のReiちゃんの撮影みたいな感じで、うろうろ歩き回って撮るっていうのばかりだから。今回も、Reiちゃん自身にもイメージはあったけど、かといってこういうふうにしなきゃとかそういう気持ちでは全然なかった。だから、私はいつも通りでしたね」
Rei「写真撮るときの、自分ルールみたいなものってあるの?」
信岡「なんにもない。なんにもなくて……ないですね、ないな(笑)」
Rei「え、そうなんだ? インスタとかホームページとかを見ていると、すごい自然と出ている統一感というか素材感があるから。これは語弊があるかもしれないですけど、こだわりが強い方なのかなって。アーティスティックな方なんだろうなって思っていたんですよ。そういうところに惹かれていた部分もあったんですけど、実際には意外と結構自由だから」

――そのスタイルのなさがスタイルなんでしょうね。気分によって変わったりします?

信岡「自分の写真がですか? どうかな。なんかでも、ひとつだけを撮りためるというのをしたことがないので。展示のときも自分の普段の写真だし。でも……私、まわりに人がいなかったら写真を撮れないかもしれない。友達でも恋人でも。あまり風景だけで、人のいない写真は撮っていないなと思っていて。やっぱり人を撮りたいというのだけはあるのかもしれない。今回REIちゃんはもともとお友達だったから、私も同じ年だし結構撮りやすかったんですけど、まったく初見のバンドにお願いされたときに全然上手に撮れなかったことがあって。その日にはじめましてで、音源は聴いていたけれどちょっと……っていう。めっちゃ落ち込んで。結局、自分と相手の距離が近くないとシャッターを押したくないし、あまりいいものは撮れないなというのがありますね」
Rei「それはめっちゃわかる。曲を録るときもミュージシャンの方とかスタッフの方とか、なんらか人間的な繋がりがある上で作品に参加してもらったほうが絶対に自分もよくて。それはすごい心がけてる。距離感は音にも写真にもきっと出ると思います」

――Reiさんは音楽を作る上でマイルールみたいなものってあるんですか?

Rei「ルーチンワークは作らないこということ心がけています。どうやったって同じ声で、同じ価値観で、同じ身体の作りでっていう人が音楽を奏でているから、自然と統一感が出ると思っているんです。だから、変わることを恐れずに、作る時もギター1本で作ることもあればピアノで作ることもあるし、フェスとかできれいな景色とかを見て感化されて作ることもあるし。同じ方法で毎回作らないようにして新鮮なものを作りたいなというのはあります」

――たくさんの写真の中から、どういうものをピックアップしていった感覚なんですか?

Rei「見えない基準のもと、感覚で選んでいった感じも多かったんですけど、色合いのバランスとか表情が凛としているものもあれば1枚だけ笑っているものもあったりとか。自分でこういう人間でありたいなというものをある程度加味して、表情とかテイクとかを選びました。あとはMUSIC BOOKということなので、音楽的な要素を強めようという気持ちがあって。譜面とか、歌詞はもちろんそうなんですけど、ギター持った写真を入れたりもしてみました。」
信岡「ごはんに行ったときに、まずジャケットがこれに決まったというのを教えてくれて。会ったとき作業が途中で、こういう感じでいまやっているんだけどというのを見せてもらって。そうしたら版画をやったりとかもしていて。本当に何でもするんだなと思って。率直に大変じゃないの?とまず言ったんですよね。本当に一回り小さくなってない?っていうくらいすごい疲れて見えて。で、それだけ全部こだわりをもって追求してやってるんだなと思って。音楽っていま配信で楽に聴けちゃうからCDショップで手に取る機会が減っているけど、手にとってもらいたいし、何回も見直してほしいとすごく言ってたんです。これは見る、大丈夫だろうなと私は思ってた」

――だから本当に、Reiさんの作品なんですよね。

信岡「そう。本当にそうです」

――音楽と一緒になることによって形になっているというか、そういう感じがすごくしますよね。

Rei「フィジカルだったりすることって自分にとってすごく大切で。目に見えない大切なものもすごくあるけれど、目に見える大切さってすごくあると思うんです。デジタルで音楽を聴くのもすばらしい進化だと思うけれど、手にとってめくったりする行為って特別だなって。そのフィジカルを大切にしたいという思いには空気感としてマッチしている写真家さんだと思うし」

――またこういうことやりたいと思います?

Rei「いや、えっと、、大変でしたけど(笑)もう一回やりたいと思います。新しいことに飛び込んでいくのってすごく苦しいけど達成感とかやってよかったという気持ちがすごく湧いてきたので。きっとこの2017年、お互いがこういう年齢で、東京という街に住んでいて。今しかできない表現があるじゃないですか。私が30歳になったときに同じような作品は作れないし、お互いが30歳でも無理だと思うから、今しかない作品を作る尊さをすごく感じましたね」
信岡「間が空いてまたやったらおもしろいかもしれないですね」


Rei『CRY』【リリース情報】


Rei『CRY』

2017.07.05 Release
DDCB-12403 / ¥1,852+税
レーベル : Reiny / AWDR/LR2

[収録曲]
01. Tumblin’
02. MOSHI MOSHI
03. Tōfu Blues
04. Don’t Wanna Kill My Soul


◆ Rei “Tumblin’” (Official Music Video)
https://youtu.be/ngyFReGKt1k


【ライブ情報】

■2017年7月28日(金) FUJI ROCK FESTIVAL‘17
■2017年8月11日(金) 12日(土) RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO
■2017年8月19日(土) SUMER SONIC 2017
■2017年8月23日(水) FENDER×SMA “SUNBURST SOUL SESSIONS” @LIQUIDROOM
■2017年9月1日(金) Sing N’ Play@umeda TRAD
■2017年9月17日(日) New Acoustic Camp 2017 @水上高原リゾート200
■2017年10月6日(金) Reiny Friday -Rei & Friends- Vol.7 @shibuya duo MUSIC EXCHANGE
■2017年10月7日(土) FM802 MINAMI WHEEL 2017


【「CRY」リリース記念インストアイベント】

2017年7月5日(水)発売「CRY」(DDCB-12403) をご予約、ご購入のお客様に参加券を1枚進呈。
■2017年8月20日(日) 18:00 タワー新宿店7F ミニライブ&サイン会
http://tower.jp/