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2017.12.07 UP
宇宙人 (Cosmos People)『RIGHT NOW』インタビュー

取材・文 / 西廣智一

台湾出身の3人組バンド、宇宙人(Cosmos People)がニューアルバム『RIGHT NOW』を11月8日にリリースした。前作『10000 HOURS』から約2年ぶりの新作となる今作では、過剰な装飾をそぎ落とすことでメロディを際立たせる手法が取られており、彼らの非凡なメロディセンスと巧みなアレンジ力が前面に打ち出された力作に仕上がっている。この新作を携えて11月下旬に来日した彼らに、新作で試みたさまざまなチャレンジや音楽に対する真摯な姿勢について語ってもらった。

――前回お話を聞いたのが昨年3月。それから現在まで、宇宙人(Cosmos People)は何度か来日してライブを行ってきました。
小玉 (シャオユー:Vo,Key): 日本に来ることは、もはや台湾のどこかの都市に行くような感覚になっていて。そういう意味では、温かいところに戻って来たかなという感覚です。例えばファミリーマートとかローソンとか見かけると、「ああ、日本に戻って来たんだな」という気持ちになります。あと、最近は日本のファンの皆さんが台湾までライブやイベントを観に来てくれるようになって。それは本当にありがたいですね。

――特に最近は、日本のバンドと共演する機会が増えたと思います。そういったバンドから受ける刺激もあるんじゃないでしょうか?
阿奎 (アークエ:G): 影響はすごく大きいと思います。日本のバンドの皆さんはほかの海外のバンドとは違う個性やスタイルを持っていて、すごくオリジナリティがある。僕らにとっても学習に値するものがたくさんあるので、彼らのステージを一生懸命観て、それを吸収して、自分たちのライブに反映しています。それによって、僕らのライブを観た人から「最近、すごく変わったね」と言われることも増えました。
小玉: 例えばTHE ORAL CIGARETTESはライブでの盛り上げ方が参考になったし、一方でNulbarichの歌い方にはすごくオリジナリティがあって、その世界観にみんなを引きずり込むというところでもすごく勉強になります。

――宇宙人の音楽を聴いていると、欧米のポップスやロックからの影響もありつつ、それと同じくらい日本の音楽にも通ずるものが感じられて。特に新作『RIGHT NOW』を聴くと、その度合いがより高まっているように感じました。
小玉: 日本語と中国語のテイストというのはとても似ていて、どちらも甘い感じがするので、実を言うと自分自身デモを作るときにデタラメの日本語で歌っているんです。それを聴いた2人は「あれ、日本語?」と勘違いするぐらい、日本語は僕らの作るメロディに合うんですよね。

――言葉の違いはあれど、同じアジア人ということもあってかメロディの感覚が近いのかもしれない。だから、自然と入ってくるんですかね。
小玉: そう言ってもらえると、僕らも嬉しいです。

――今回アルバム『RIGHT NOW』は2年ぶりの新作となりますが、制作の際にはどのような内容をイメージしていましたか?
方Q (ファンキュー:B): 最初はコンセプト的に、わかりやすいメロディにしようと思いました。なぜかというと、以前東京でライブをしたときに日本のスタッフからいろいろアドバイスをもらって。そのアドバイスというのが、まさに「わかりやすいメロディ」だったんです。だったら、そういう方向に進んでいってもいいんじゃないかなということで、わかりやすいメロディの楽曲を作っていった。その中で、小玉が書いた歌詞というのがすごくストレートなものだったので、まさにアルバムタイトル『RIGHT NOW』と一緒で、全体的に直感的な内容に仕上げられたのかなと思います。

――だからなのか、前作にあった派手さが若干薄れて、音数を少なくすることでメロディを際立たせようとアレンジを工夫されているのかなという印象を受けました。
方Q: 実をいうと、これが一番難しいことであって。自分たちにとっても、今回一番のチャレンジでもありました。

――音を足して飾ることは意外と簡単かもしれないけど、確かに引き算というのは難しそうですね。でも、今作ではそこに関して成功したと思いますよ。
小玉: (日本語で)ヨカッタ!(笑)。

――そういった思いは、アルバムタイトルにも表れていますよね。前作『10000 HOURS』では“日々の積み重ね=成長”を表現していたと思いますが、本作『RIGHT NOW』では今あるがままを見せているようで。
阿奎: 前回のアルバムとはすごく関わりが深いと思います。前作における成長は必ず通らなければならない道で、だからこそ今回は「今の姿」をそのまま表現することができたので。

――サウンド的にも、前作には外に向けた開放感や華やかな印象がありましたが、逆に今回はもっと内面にあるものを表現していくイメージ。そういう相反しながらも対になる2枚なのかなと。
3人: お〜。
方Q: 今回に関しては本当に、宇宙人というバンドの持つ個性を前面に出しているんです。例えば1曲目「Let Me Go / 現在就讓我走」を最初に公開したとき、この曲を聴いたリスナーのリアクションが今までとは全然違っていて。「これを聴くと気持ちを解放できる」とか「挫折した過去を思い起こして、それをどう解放していくのか、出口を見つけることができた」とか、そんな声をたくさんもらいました。そこも、内面をあらわにしたからこその反響なのかなと思います。

――前作で表現したことと今作で表現したことというのは、実は表裏一体であって、全部地続きなのかもしれませんね。
小玉: 僕たちが伝えたいことをそこまで理解してもらえて、嬉しいです。

――だからこそ、アルバム終盤に前作までの楽曲のライブトラックがボーナストラックとして収められていても、違和感なく楽しめるのかもしれません。
阿奎: なるほど。そうかもしれません。
方Q: あのライブトラックですが、日本の人気アーティストたちとの共演経験を持つホーンセクションと一緒にライブができると聞かされたときに、それを記録しておきたいと心の中で思っていたんです。それを素晴らしい状態で残すことができたのが嬉しいですし、しかも日本のレコード会社が尽力してCDに入れてくれたことがとても嬉しかったんです。

――今回は作詞作曲に3人全員が参加していることが、特筆すべきポイントだと思います。それにより、個々のカラーをさらに濃く表現できたんじゃないでしょうか?
小玉: 2人がソングライティングに注力してくれたことで、宇宙人のバンドらしさがより強く出たと思うし、今まで楽器で表現していたことを言葉で表現することで宇宙人の世界観をより広げることができたんじゃないかと。それは本当に素晴らしいことだと思います。
阿奎: 今までの制作ではギターのみでの参加だったので、それに関しては慣れてきたけど、作詞作曲はゼロからという状態。例えば「ボーカルを録るとき、この歌詞をどう歌ってもらうか」とか、そこまで考えたうえで作らなければいけないので、ギターをレコーディングするよりもはるかに難しかったです。
方Q: 僕はもともと性格的にひとつのことに執着するタイプではないので、逆に何か見つけたらそれをすぐみんなに知らせたいんです。だから、今回は何かアイデアが浮かんだらそれをすぐにみんなに伝えて、そこから一緒に曲を作っていくのが、自分としてはそれがすごくやりやすかったです。
小玉: 阿奎が書いた「夏の憧れ / Summer Festival / 心向夏天」という曲があるんですけど、その曲を録るときに何度か歌ってみたものの、どこかしっくりこなくて。そこで阿奎が最初に録ったデモを聴き返してみて、そのテイストに自分なりにアレンジを加えて歌ったら、それが採用されたんですよ。そういうことは、今までにない経験でしたね。

――なるほど。作詞作曲のみならず、プレイヤーとしても音数が少ないからこそ、前作以上に耳に残るプレイを心がけたんじゃないかと思いますが。
阿奎: 良い機材を使いたくて、たくさんお金をつぎ込んだので(笑)。
小玉: もしかしたら、それが良い音に影響してるのかもね(笑)。

――(笑)。でも、それだけ音に対するこだわりがあるという証拠ですよね。
阿奎: もちろん。実はワールドツアーでいろんな国を回ったんですけど、その際に各地で自分の求める音を出せる機材を探したんです。でも、最終的には台湾の倉庫で見つかって(笑)。それだけ今回はこだわりを持って、制作に挑みました。
方Q: 世界中を大きく一周して、スタート地点に戻ったらあったという(笑)。
阿奎: それも縁ですよね。

――確かに。僕は特に「デュエット ダンス / Pas De Deux / 兩人舞」のギターが、音色含めて気に入っていて。
阿奎: ありがとうございます。この曲の歌詞に「僕たちは回り続け」という表現があるんですけど、それをどうギターで表現すれば一生懸命考えたんですけど、気がついたらギターを弾く右手をクルクル回しながら弾いていたんです(笑)。

――そうなんですね(笑)。かと思うと、「Hello Princess / 你以為」でのスラップベースもカッコいいですし。
方Q: 僕はマーカス・ミラーやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー、東京事変の亀田誠治さんといったベーシストが弾くベースラインがすごく好きで、あの曲のプレイに関しては彼らから受けた影響と自分の個性をうまくミックスできたんじゃないかと思います。聴いてくれた人にも「台湾にもこういうベーシストがいるんだ」と感じてもらえたら嬉しいですし、そのためにも今も日々勉強中です。

――なるほど。それぞれのプレイが本当にメロウで一切無駄がなく、しかも歌メロを邪魔することなく楽器のフレーズもしっかり耳に残る。そのバランス感が素晴らしいと思いました。
阿奎: それこそ自分たちがアレンジする際に重点を置いたポイントだったので、そこもしっかり感じてくれて本当に感謝しています。僕たちがアルバムを作るときに一番意識していることは、どうやって先人たちを超えていくか。ギターの話をすると、60〜70年代でギターの技術というのはある程度完成されてしまっていて、それを超えるのはなかなか難しい。だからこそ今のテクノロジーを交えつつ、どうやってそこを超えていくかをすごく意識して音作りをしています。

――さらに面白いのが、最近の欧米のヒット曲と宇宙人の新作との共通点なんです。欧米のヒット曲はここ数年、音数の少なさやメロディのシンプルさが際立つものが増えていて、リスナーもそういう作品を求めている印象があります。今回、宇宙人の『RIGHT NOW』を聴いたときに、まさにそこと同じ感触だったので驚いたんです。
小玉: 確かに海外の音楽を聴いていると、メロディがシンプルになってきているのは自分でも感じます。もちろんその時代その時代に合ったメロディというのもあると思いますが、どの時代であっても音楽を通してリスナーがどう気持ちを解放させていくかがすごく重要なポイントだと思っています。
阿奎: その気持ちを解き放つうえで重要になるのが、歌詞だと思うんです。僕たちは音楽を作るときに歌詞とメロディと一体化させないといけないと思っていて、中でも言葉のチョイスや発音によってメロディの乗せ方が変わってくる。その心地よいポイントを見つけるまでが、すごく時間がかかるんです。
小玉: 同じ表現でも言葉が違うだけで、その響きから受ける印象がまったく変わりますし。例えば「台湾」という言葉の響きがメロディに合わなかったら、「高雄」という言葉に変えてみたり、そういう工夫が必要になるんです。

――なるほど。そういえば本作には、日本語詞オリジナル曲「PARALLEL BLUE」や「Let Me Go / 現在就讓我走」の日本語バージョンが収録されていますが、小玉の日本語歌唱がかなりナチュラルになってきましたよね。
小玉: はい、たいぶ歌い慣れてきました。以前はレコーディングにも日本のスタッフに来てもらって、発音を教えてもらってましたが、今はもう自分ひとりでも大丈夫です(笑)。でも、実際には何回も録り直してますし、濁音の部分とかそういうところでは多少苦労してます。次には今の自然な感じに加えて、自分ならではのスタイルをうまくミックスした歌い方ができるようになりたいですね。

――さて、本作の楽曲をライブで表現しようとすると、それまでとは違った手法も必要になるのかなと思いますが?
小玉: 日本に来る前に台北や香港でライブをやったんですけど、それこそものすごいチャレンジでした。実は、台湾ではアルバム収録曲を全部演奏したんです。これだけバラエティに富んだ楽曲を一度に披露するということは、レコーディングとはまた違った工夫も必要になってくるんです。
阿奎: それこそ、リハーサルには2ヶ月ぐらい費やしました。

――そうだったんですね。今作は作風的にも、全編アコースティックアレンジで聴いてみたいと思いました。
3人: あ〜。
小玉: それはぜひやってみたいです。でも、アコースティックとなるとさらに準備が大変そうですけど(笑)。
方Q: そのために、阿奎はこれから新しいギターを購入しないとね(笑)。

――最後に今後の予定を。新作を携えた日本公演を待っているファンも多いと思います。
小玉: 来年の春には台北のTICC(台北国際会議センター)でのライブを予定しています。それが終わるとワールドツアーに入り、できたらそのゴールでまた日本に戻ってきたいです。



 

宇宙人 (Cosmos People)

・阿奎 (アークェ/Guitar)
・小玉 (シャオユー/Vocal & Keyboard)
・方Q (ファンキュー/Bass)

宇宙人 (Cosmos People)は、小玉(シャオユー)と阿奎(アークェ)によって2004年に結成。
高校の同級生だった2人は、好きな音楽が一致して意気投合、ダンス・ミュージックやファンクに日々夢中になりつつ、卒業後にバンドを結成した。以来10年近くに渡って、曲作り/レコーディング活動とライブ活動に精進してきた。
幾度かのメンバー・チェンジ後、現在は高校時代の先輩でもある方Q(ファンキュー)を加えた3ピースバンドとして活動中。
台湾ではMayday(五月天)と同じレーベル”相信音楽”に所属。
年間100本以上のライブを行い、昨年3000人を動員するTICC台北國際會議中心での大型単独ライブを開催・成功させる。
CM/広告にも多数抜擢、さらには香港やシンガポール、中国大陸でのワンマンツアー、USの世界的音楽フェス”SXSW”にも出演するなど、その実力・注目度は台湾を飛び越えて急上昇中!

◆ Official Site ⇒ https://cosmospeople.jimdo.com/
◆ Facebook ⇒ https://www.facebook.com/cosmospeople
◆ Twitter ⇒ https://twitter.com/CosmosPeople

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